2016年4月9日土曜日

アベノミクスというリフレもどき





安倍長期政権で株価3万円へ http://ironna.jp/article/723
【独占インタビュー】投資の神様ジム・ロジャーズ「日経平均は3万円まで上がる。

 いやあ、すごい。アベノミクスで日本経済大発展だなあ、と皮肉を言うために貼ったわけでは、ちょっぴりあるけど、本来の目的はそうじゃない。
 だいたい総理自身が最近あまり口にしないからね、アベノミクス。
 そんな可哀想なアベノノミクスが置かれている状況について、もう少し整理してみよう。

 アベノミクスとはなんなのか、多分総理自身も含めてあんまりよくわかってないんだろうな、と思う。

初春のめでためでたのめでたさで「アベノミクス」とやらをどうすればいいのか書いてみる

↑この年初のエントリーでも触れたけど、まずアベノミクスの目的は消費税増税をスムーズに行うことにある。
 人為的にインフレを起こすことで、増税という「経済成長に水をぶっかける」行為の正当性を得ようというわけで、まあ経済政策のマッチポンプみたいなもんか。実際、ドイツの有名なハイパーインフレの時も、増税したらスピードが緩んだということがあった。
 よく「リフレ」って言われるし、経済学者もそう言っちゃってるけど、でもその実態は全然リフレじゃないので。まあそのうち総理が「アベノミクスがリフレだなどと、一言も言ってない」くらい言いそうな気もするけど。
 で、ノーベル賞とかのエラーい経済学者の皆さんが肯定しているのは、あくまで「リフレ」であって増税ではない。だって、本当にリフレをやるんなら、消費税なんか減税するのが本当だからね。今の日本の状況では。消費税増税こそを目的とするアベノミクスはリフレじゃなくて、「リフレもどき」みたいのものなのだ。

 じゃあ、本当のリフレってどんなもんだろう?
 リフレの先輩、高橋是清の例を見てみよう。ちなみに、是清は昭和八年の年頭のインタビューで、自分の政策は「リフレだ」と言っている。語感が悪かったのか広まらなかったけど、リフレってのはそんな真新しいような概念ではない。でも当時は「インフレ景気」と普段には呼ばれていた。
 以前取り上げた昭和八年の雑誌現代の付録『金を物に換へる時代が來た 何に換へたらよいか』から引いてみよう。ただ写すんじゃ前回と同じなので、注釈つきで。(仮名遣い等改め)

……………
「……好景気と、今回のインフレ景気とは、大いに相違する処がある」
「どういう点が相違するか」
「まずそれを列挙すれば下の如くであろうか。

①好景気の場合には、物価や株価は上がっても、また後日下げるけれども、インフレ景気の場合には物価や株価は上がったきりで下がってこない。
(アベノミクスでは下がってきている。この政策が本当に「リフレ」なら、冒頭の神輿の助頭みたいな人たちの予言通りになっていただろう)

②好景気は需要増加から来るが、インフレ景気は平価切下げ見越しから来る。
(平価切下げ見越し、てのは「円安誘導」てこと。今円高に振れてるのは「リフレ」ならおかしい)

③好景気の際には一般民衆の収入まず増加して、然る後に徐徐として物価が騰貴するのだが、インフレ景気の際には物価の方がまず騰貴し、而して後に徐徐としてストライキの力で嫌々ながら収入が増加する。
(労組は企業にお伺いを立てるばかりで、ストなんかやんないもんね。政府からベア上げろの要請とか、ただの人気取りの猿芝居でしかないし。結局実質賃金は下がりっぱなし)

④したがって、好景気の際には、収入増加率の方が物価騰貴率よりも大であったが、インフレ景気の際には物価騰貴率の方が収入増加率よりも大である。
(CPIが思うように上がらなくてデフレ脱却といいつつマイナス成長なわけだけど、実質賃金が下がってる分実感として物価は上がってる。消費税増税分もあるし)

⑤したがってまた、インフレ景気の下に於いては金持ちは値上がりの利益でホクホクするかも知れぬが、一般勤労大衆は物価高で生活難を蒙り、社会問題が激化するにいたるであろう。
(大企業は史上最高の利益を上げてる。こういうとこは「リフレ」だね)

⑥好景気は、富の分量を全体として増加させるものだが、インフレ景気は富の所在を変化させ、富の分布状態を激変せしめんとする。
(富の総量が増えるのではなく、偏るだけだとしている。こういうとこもちゃんと「リフレ」だ)

⑦詳言すれば、インフレ景気は金持ち同士をして、値上がりを背後として富の争奪戦をなさしめ、富の集中化を一層大ならしめるものである。
(これ、リフレを煽る人たちは全然言わないね。だからリフレをやる時は福祉を手厚くするなどの方策が必要で、スティーグリッツなんかはアベノミクスの初期からそう言ってたのに、みんなそういう都合の悪いことには耳をふさいでいたよね)
……………

 なんか、戦前の人の方が冷静によく見てるよなあ、と思う。
 つまり、リフレってのは株価を上げて景気をよくするように見えて、実は格差を広げてしまう政策なのだ。
 だから消費税のような間接税は減税するとか、福祉はどんどん手厚くするとか、そういうフォローが必要になってくる。
 その真逆のことばかりやって、現在の状況があるわけだ。リフレのマイナスの部分ばかりが「成果」を上げた結果、中身のないふくらし粉ばっかりのパンみたくぺしゃんこになっているのだ。

 長くなったので次回に続く。
 

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