2015年1月18日日曜日

カバさんとワニさんの謎


ビヒモス (岩波文庫)
ビヒモス』という、ホッブズの主著でありながらなかなか邦訳が出なかった本が、この度めでたく岩波文庫で出版されたので、ちょこちょこ読んでいる。なんで今まで翻訳がなかった(大学のテキストなどで部分的にされたことはあったようだが)かというと、『リヴァイアサン』のように普遍的なテーマを含んでいないからだ。中身はイギリス王室ばんざーい、クロムウェルの野郎は地獄に堕ちやがれ、ぺっぺっぺっ、という感じ。無神論者とか反王政だとか、そういう批判をかわすのが目的で書かれたようだ。


 ところでこの、「リヴァイアサン」と「ビヒモス」という書名は、旧約聖書のヨブ記などに登場する怪物、レヴィアタンとベヘモーテ(ベヒモス)からとった、とされている。
 レヴィアタンは海の怪物、ベヘモーテは陸の怪物。そのイメージの元となった動物は、レヴィアタンはクジラとかウミヘビとかワニ、ベヘモーテはゾウかカバである。
 で、ある絵が思い出されて来るのだが……


ルーベンス「Hippopotamus and Crocodile Hunt. About 1615 」

 ルーベンスの『カバとワニ狩り』という絵画である。
 この絵は他のハンティングを主題にした四作品とともに、バイエルン選帝侯マクシミリアン一世の依頼で描かれた、と言われている。
 といってもここらへんの事情ってのは、どうもあいまいだ。まあしかし、この絵がマクシミリアン一世の元にあったことは間違いないようではある。(現在はアルテ・ピナコテークのルーベンスの間にある)
 で、この絵についてなんだけど、いろいろな解説を読んでも(英文も)、「旧約聖書が元だ」って書いてないんだよね。
 なんで?他のハンティングものはライオンとかトラとかイノシシだから?それとも、ルーベンスが別な意図で描いたという文書でもあるのか。ルーベンスは『フランダースの犬』の最期に出てくる絵でもわかるとおり、巨大な宗教画を山ほど描いてるわけだから、これが聖書から題材をとった絵だとしても、どこもおかしくないように思えるのだが。

 なんだろう、なんかひっかかる。
 ついでに、ホッブズもルーベンスも同時代の人間だ。ホッブズは一五八八年から一六七九年、ルーベンスは一五七七年から一六四〇年。
 十七世紀にレヴィアタンとベヘモーテ、ワニとカバについてなにか「ブーム」のようなものでもあったのだろうか。
 どうでもいいことかもしれんけど、これ、ずっとひっかかったまんまなのだ。  


Peter Paul Rubens (Best of)

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