2014年10月19日日曜日

【ちょっとここでピケティがどんな批判にさらされたか振り返ってみる編】もしも西荻窪の古本屋がピケティの『21世紀の資本』(PIKETTY,T.-Capital in the Twenty-First Century)を読んだら

 とにかく未だブーイングの治まらぬピケティ周辺なんだが、どんなふうな批判があったか、ちょうどいいエントリーがあったので覗いてみたい。
What Piketty’s Conservative Critics Get Wrong
http://www.thebaffler.com/blog/what-pikettys-conservative-critics-get-wrong

 >You can see why conservatives are going to be enraged by this book.
「保守派がこの本にどれだけむかっ腹を立てたかご覧にいれよう」

 まずはライハン・サラームReihan Salamという若き保守論壇のリーダーは、読みもせんと他人の書いた批評から、「悲観ぽくて気に食わねー」と書いた。んで、論はおおむね別なSF小説の方へいっちゃってる。

>(WTF?)
「なんでそうなるの?」(四十代以上は欽ちゃんの声で再生してください)

>Salam’s piece was dumb, but things were about to get more idiotic.
「サラームの文章も糞だけど、こっちはもっとアホ」

 と紹介するのは、ダニエル・シャッハマンDaniel ShuchmanがWSJに書いたレビュー
厳密な思考に基づくこの本を

>“less a work of economic analysis than a bizarre ideological screed.”
「糞なイデオロギーの無駄口以下の経済分析だ」

 なんて書いた。ピケティの論をゆがめて解釈しただけでなく、赤狩りred-bitingめいた古くさいことを言い出したりする。
 そして最後はコレ。

>“the professor ought to read ‘Animal Farm’ and ‘Darkness at Noon,’”
「この教授様は『動物農場Animal Farm』や『真昼の暗黒Darkness at Noon』を読むべきだね」

 えーっと、この二作品を書いたオーウェルもケストラーも左翼なんだけど……。読んでないんだろうなあ、また。
 で、ブロガーさんは、
 
> I was ready to award the dunce cap to the Journal and call it a day.
「この記事に記念としてダンスキャップ賞を送ろうと思った」

 と書く。えーと、ここでうんちく垂れとくと、ダンスキャップってのは、ハイスクールの卒業式で今でもやってんのか知らんけど、普通は角帽をかぶるところを劣等生だけとんがり帽をかぶらされるというイヤミな風習があって、まあそういう意味なわけなのだ。アメリカの小説読んでるとたまに比喩として出てくるんだが、訳者が注を振ってなかったりするんで憶えとくと便利。うんちく終了。

>But then along cameMegan McArdle’s column for Bloomberg View.
「そしたらミーガン・マッカードルMegan McArdleのコラムをブルームバーグでみっけちゃった」

>Her piece on Piketty contains what is surely one of the most extraordinary openings of a book review I have ever read:
「彼女のピケティについての記事ってば、今まで読んだなかでいちばんドびっくりな書き出しなんだ」

>I apologize in advance, because I am going to talk about a book that I have not yet read. To be clear, I intend to read Thomas Piketty’s "Capital in the Twenty-First Century." It is sitting on my (virtual) bedside with a big stack of other (digital) books that I intend to read. But it’s far down in the queue, and I’m afraid that I can’t wait to weigh in -- not on the book itself, but on its topic. How much does inequality actually matter?
「ごめんねー、実はこの本まだ読んでないんだー。正直、ピケティの『21世紀の資本』を読まなきゃなとは思ってるよ。読もうとして電子書籍に入れて(ちゃんと)ベッドサイドに放り出してあんだけどね。先に読まなきゃな本がたくさんあって、なかなかそこまでたどり着かないのよねー。で、この本なんだけどさあ、格差の何が問題なわけえ?」

 うわ、おもっくそ超訳しちゃった。でもこんな感じ。だめだこいつ。なんでブルームバーグに文章載せられるんだよ。信じられん。
 しかしまあ、こんな具合にピケティは読まずに批判されているのだった。やれやれ。
 で、これ、次回にも続けてみたい。



21世紀の資本
 さて、今回のエントリーから、タイトルの書名を『21世紀の資本』とした。せっかく翻訳出るんだから合わせとこうと思って。

 あと、日本経済については、もうちょっと待って。すげえしんどいんで。なんかもう、ダイオウイカと素手で格闘してるみたいな気分。






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以下、続いて書かれたエントリーのリンク集。
読み進むにつれて触発され、「財産」が「世襲」される時に経済的な事象を越えた振る舞いをする、ということについて書こうと思いました。が、あまりに大きなテーマだったので途中で切り上げました。また勉強しなおして、取り組みたいと思います。

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