2014年8月16日土曜日

古本屋については「あるある」よりも「ないない」の方が多い

 前回のエントリーにちなんで、「古本屋あるある」の提案をいただいたのだけど、どうも「あるある」より、「ないない」「それはない」の方が多いように思う。なので、古本屋「ないない」の話。
 
木曽名所図会 揃い
 「どんな本でもたちどころに見つけ出す。その技、神域に入る」
 ……なわきゃーない。
 そりゃ一般のお客様に比べりゃ数万倍(当社比)の知識はあるけれど、古本屋の扱う書籍は現在出ているものだけでなく、何十年、ヘタすりゃ何百年も前のものも含まれる。(当店ですら江戸時代の書籍が在庫していたりする)海外のものだってある。
Yellow Book その他
大げさでなく、何兆冊あるかもわからないんだから、「子供のときに読んだ茶色っぽい表紙で、かわいい女の子の出てくる話を探してる」とか言われても困るのだ。困るけれども、そういうことを訊いてくれた方が話のきっかけになるので、困るけれども訊いて欲しい。だから困っていてもわからなくても(ち、使えねーな)とか思わないで欲しい。真摯なお願い。


「買い取りはすごい買いたたく。もう悲しくなるくらい安く買う」
……ようなことはないのでご安心を。
 なんつーか、経験則的に、お客様が買い取りのあとため息をつくと、その本はなかなか売れなかったりするんだよねえ。なんか呪いでもかかるのか知らんけど、出来るだけそういうことのないように気を配ってはいるわけで。
井伏鱒二の直筆と横尾忠則のポスター
  それとやっぱり、あんまり古本屋を利用されない方(買いにくる方でも)の方が、「買いたたかれる」という先入観がきついようだ。売るときはネットで検索するだけでなく、一度お店に足を運んでくださるようにお願いしたい。切実なお願い。

「古本屋は楽して儲けている」
……そう思うんなら、ご自分でやってみることをおすすめしたい。
 現在、どこの古本屋でもそうだと思うけど、将来ある若者が「古本屋を開業したい」なんて言い出したらとりあえず止める。「アメリカに渡ってビッグになって帰ってくる」とかの方がまだ可能性がある、と言わんばかりに止める。実は私も止められた。でも、これしかできることがないんよ。なので止まんなかった。

「古本屋は本が好き」
………… これ、本宅でも何度か書いてるけど、「好きじゃできず、嫌いじゃできず、中途半端じゃなおできず」という世界なんで、好きだの嫌いだの言ってるうちは半人前なんよ。まあこういうのは、趣味的なものを扱う職業だとみんなそうなんだろうけど。
 確かに年がら年中本を読んではいる。しかしこれは、毎日三食たべてる人に「よっぽど食べるのが好きなんですね」とは言わないように、好きだから読んでるのではなくて読んでないと死んでしまうから読んでいるのだ。

「古本屋は女の行くとこじゃない」
 ……いやいや、最近は女性客の方が多いくらい。


 本宅で以前同じようなことをちらちら書いたけど、いい機会だと思ってまとめてみた。
 改めてこうして見てみると、何の因果でこのような、とため息が出る。


古本綺譚 (平凡社ライブラリー)

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