2014年5月15日木曜日

なぜおばあさんというものは怖い話をごく普通のことのようにして話すのかPart.4

 確か今頃の季節のことだったと思う。
 よく晴れた日、私はおばあさんが畑仕事をするところを見ていた。
 まだ保育園に通っていた頃で、園は休みだというのになぜか私はスモックを着ていて、何らかの用で両親が留守にしていたのを憶えている。
 おばあさんはふと畑を耕す手を止めると、私の方へ丸くて茶色い穴のあいたものを放ってよこした。手まりと同じくらいの大きさで、たいして重くなさそうに見えた。
 おばあさんはその時、ちょっといたずらっぽい感じでこう言った。
「ほれ、しゃれこうべが出てきたぞ」



 今思えば、それは単なる木の根っこの膨らんだものかなんかだったと思う。おばあさんは退屈そうな私をちょいと怖がらせてやろうとしたのだろう。

 とはいえ、私の郷里が火葬になったのは、戦後になってからだったので、本当にしゃれこうべが出てきてもおかしくはなかった、かもしれない。
 おばあさんの言うところでは、「昔は、みんな墓地の近くに畑を作りたがった」という。
 土葬の墓地の側は、畑の実りがよかったからだ。田んぼなんかは、墓地から離れるに従って、稲の背が低くなったという。
 そのためか、畑の側に自分の家の墓を作ってしまう人もいた。

 父は昔、そうした畑の畦に作られた墓の側を通ることがちょくちょくあって、そこには雨の晩など必ず人魂がぽつぽつ灯っていたそうだ。冬の薄暗い日には、昼でも見ることがあったという。人魂については、骨のリン分が燃えるのだと言われていたが、現在骨に含まれるリンが発光することはない、と否定されている。

 人魂というものは、祖父母はもちろん、叔父叔母全員が見たことがあり、幼い私は「いずれ自分もどこかで見られるだろう」となんとなく期待していた。
 だが、今もってまったく巡り会えていない。
 おそらく、学研の「かがく」と「がくしゅう」で、「かがく」の方だけ買っていた報いと思われる。



コロ助の科学質問箱 (学研まんがひみつシリーズ)

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