2013年12月28日土曜日

神とは誰のことかのつづき

 前回のつづき。
 マラルメの有名なセリフに「世界とは一冊の書物に至るべきものだ(Le monde est fait pour aboutir à un beau livre.)」というのがある。とても有名なのに人によって解釈が違ってくる、ということでも有名なセリフだ。ひねくれた人は「ル・モンドで連載して本にしたいなあ、てことだろ」なんて茶化したりする。しかしまあ、前回のようなことに気づけば、「人間の歴史って、読者の視線を意識してるよね」ということを言ってんだな、とわかると思う。
マラルメ詩集 (岩波文庫) 
  そういう「過去の歴史を神の如き視点から書物を読むようにして解く」なんてのが啓蒙思想で流行ったのは、ニーチェが否定してフーコーが批判してからはなはだ評判の悪いものになってはいるけれど、やはり「普通の」「凡庸な」読者にとっては魅力的であることに変わりはない。
 そんなわけで、一年の締めくくりに大ボラを一発かましてみようと思う。どのくらいの大ボラかというと、マルクス並みのやつだ。しかも、ホラとは言えどちょっとマジだったりする。ちょっとだけね。

2013年12月26日木曜日

神とは誰のことか

  The End Of The Affair (Vintage Classics)

 自慢にならない話を自慢げにすることから始めよう。
 最近店の行き帰りに、グレアム・グリーンの"The End of the Affair"(邦題『情事の終り』)を辞書なしで読んでいる。日本語訳の方は未読だが、読む必要を感じないし、恐らくは読まないだろう。なんたって、掛け値なしに「高校生程度の英語力で読める小説」で、 いちいち辞書を引くのなんかアホらしくなるくらいなのだ。
 逆に考えると、こういう簡明な文章で名作をものにするところが、グリーンという作家の底知れぬところなのだろう。ついでに白状すると、グリーンの小説を読むのはこれが始めて。映画ですら、『第三の男』を見たことがあるだけだ。

2013年12月25日水曜日

Merry X'mas!!と言いつつおやすみです


 旧ソ連のクリスマスカードです。
 サンタ、宇宙船に乗ってますね。トナカイは非科学的すぎるからでしょうか。
 あ、そういえばロシアではサンタではなくて、マロースおじさんでしたっけ。
 その他の画像はここで見られます。

2013年12月23日月曜日

たまには近況報告などを

「ほぼ毎日更新中」と謳いながら最近滞りがちであります。まことに申し訳ない。
 原因ははっきりしていて、娘の受験勉強につき合っているので、脳みそがへこたれてしまうんですね。三十年以上ぶりに錆びだらけの焼き玉エンジン動かしてるようなもんなので、他の部分にも負担がかかってしょうがない。おかげで、書きたいことはあるのに文章が流れ出さなくて、もどかしいんだが手も足も出ない。冬眠してる亀になったようなこころ持ちであります。

2013年12月20日金曜日

滅びをさけるための方法 つづきのつづき

 前回でブッダが弟子たちにくどくど申し付けたことについて、「反組織の法」と書いたけど、どこらへんがどう反組織なのかは触れなかった。いや、触れるとすごい長くなるんで。
 でもまったく何も言わないのも不誠実なので、さわりのとこだけ書いておこう。

2013年12月18日水曜日

滅びをさけるための方法 つづき

 前回の続き。

 さて、マガダ国王の使いが立ち去ると、ブッダはふと思い立ったように、アーナンダに命じて修行僧を集合させた。そして、修行僧たちに「衰亡をきたさないための七つの法」を説いた。
1.しばしば会議を開き、会議にはできるだけ多くの人が参集するべし
2.協同して集合し、協同して行動し、協同してなすべきことをなせ
3.未だ定められていないことを定めず、すでに定められたことを破らず、昔に定められた旧来の法に従って行動せよ
4.出家して久しい長老や教団の導きてを敬い、尊び、あがめ、もてなし、彼らの言を聞くべし
5.愛執が起こってもそれに支配されてはならない
6.林間の住処にあることを望みなさい
7.すでにある良き修行者なる友が快適に暮らせるように、そして未だ見ぬ良き修行者と出会えることを望みなさい

 さっき語ったこととだいたい同じ。そしてブッダは、さらに七つの「衰亡をきたさざる法」を説いた。

2013年12月16日月曜日

滅びをさけるための方法

1.しばしば会議を開き、会議にはできるだけ多くの人が参集するべし
2.協同して集合し、協同して行動し、協同してなすべきことをなせ
3.未だ定められていないことを定めず、すでに定められたことを破らず、昔に定められた旧来の法に従って行動せよ
4.老人を敬い、尊び、あがめ、もてなし、彼らの言を聞くべし
5.良家の婦女・童女を暴力によって捕えてはならない
6.聖域を敬い、尊び、あがめ、支持し、以前の法に適った供物を絶えないようにすべし
7.尊敬されるべき人を守り、そうすることで尊敬されるべき人が集まってくることを願うべし

2013年12月11日水曜日

なぜおばあさんというものは怖い話をごく普通のことのようにして話すのかPart.2

 祖母がまだ尋常小学校に通っていた頃だから、村にはまだ電気やガスどころか水道もなかった時代だ。
 幼い祖母は仲のいい女の子と二人で、時々山に入って遊んでいたという。子供だけで山に入ることは厳に戒められていたが、山は家から遠くないし、そんなに深くないところだからいいだろう、と子供らしい勝手な理屈で入り込んでいた。
 山に入って少ししたところで、山道からちょっとはずれると、ぽっかりと空いた相撲の土俵くらいの空間があって、祖母とその子はそこでお手玉をしたりままごとをしたりして遊んでいたという。なぜかそこは、冬でもぽかぽかしていたそうだ。推測するに、なんらかの偶然で堆積した落ち葉が堆肥となり、発酵して熱を持っていたのだろう。

2013年12月7日土曜日

今のうちに特定ヒミツをばらしておこうPart.2

 あれは、一九八八年の今日くらいのことだった。
 とある筋から、私はある情報を耳にした。
「来年の一月七日、天皇が崩御する予定だ」

2013年12月5日木曜日

今のうちに特定ヒミツをばらしておこう

 あー、なんか強行採決必至だそうで。まあ、やると思ってましたが。昔っから芸風は変わりませんな。教育基本法と同じく、満員の特急電車の中にマーライオンが現れたようなもんで、逃げようにも逃げられないわ、次の停車駅はずーっと先だわ、かなわんで、これ。
 そんなわけで、今のうちに一つ、特定ヒミツ(笑)とやらをバラしておこうと思います。

2013年12月4日水曜日

いろんな国の十五歳の学力検査について十五歳の子を持つ親がかかえる釈然としない想い

 OECDという、なんというか、先進国なかよしクラブがある。中学校の社会の時間で、「おいしいでー、じゃないぞー。おー・いー・しー・でー!」と社会の先生が必ず定番を言うあれである。
 なんかそこが、PISAと呼ばれる各国の十五歳を集めた試験をした結果、日本の成績がとっても良かった、と今朝の新聞に出てた。これまでの得点より上で、さっそく脱ゆとり教育の成果が上がってきた、とかなんとか。
http://www.oecd.org/pisa/keyfindings/PISA-2012-results-japan-JPN.pdf
 ↑OECDの評価もほぼべた褒め。舞い上がる文科省のお歴々の顔が目に浮かぶようだ。

2013年11月30日土曜日

むかしむかしそのむかしおばあさんがこんなことを言いました(怖い話ではありません)

「ネコ殺し」という言葉をご存知だろうか。
 私は昔そのように呼ばれていたことがある。といっても家業が三味線業者だったりしたわけではない。もちろん、陰惨なペット虐待の趣味があったわけでもないし、そのような話を好んだというわけでもない。
猫の大虐殺 (岩波現代文庫)

2013年11月29日金曜日

2013年11月28日木曜日

辻井喬が亡くなった

 中学生の頃、なぜか家に一冊の「現代詩手帖」あった。なんで「なぜか」なんて思わせぶりな書き方をしたかというと、詩を、それも現代詩なんかを読むような人間は、当時家には一人もいなかったはずだからだ。私はといえば、詩の存在を国語の教科書を通してしか知らなかった。
 そこに掲載されていた詩の数々は、ケツの青いガキの理解をはるかに超えるものだったが、理解しえずともそのややこしい言葉の群れは、背伸びしたがりの中学生を魅了するのに十分なものだった。

2013年11月25日月曜日

イラン大使館のおもひでぽろぽろ

イラン核協議で歴史的合意
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE9AN00M20131124

 ……ということで、ひとまずはやれやれ、と。決着は玉虫色だし、イスラエルはできたてのグラタンみたいに煮えたぎってるし、まだまだ予断は許しませんが、どんぱちなしに譲り合った結果はとりあえず良しとしたいものです。一番ほっとしてるのは、今まで革命防衛隊に押さえつけられていたイランの一般国民でしょう。
 ま、こういうのはお定まりと言うか、自国の交渉が「弱腰」に見えちゃうのは万国共通なのか、アメリカ人はこの「合意」に対してぶつくさ言う人が多いようですね。

2013年11月24日日曜日

これはヒミツなんだがという話はヒミツでもなんでもない

 ある情報をできるだけ広めたいと思ったら、「これはヒミツなんだけど」と付け加えておけば良いーーみたいなことを毛沢東が言ったとか言わなかったとか(うろ憶え)。
 今朝の朝日新聞の二面「日曜に想う」にちょっと興味をひかれる話があった。

盗んでも漏らさぬ米国流
http://digital.asahi.com/articles/TKY201311230385.html

2013年11月22日金曜日

そしてそれは封印されたのだった

 
その晩、ハハンク・ウィリアムス はアドルファス・ホテルでべろべろに酔っぱらっていた。どのくらい酔っていたかというと、たまたま同席した男と「なぞなぞ遊び」に夢中になってしまうくらいだった。

2013年11月21日木曜日

『失われた時を求めて』について前々から抱いている不埒な考え

 今年は『失われた時を求めて』が刊行されて百周年に当たるそうだ。
 これほどまでに多くの読者を魅了しつつ、かつまたよりいっそう多くの挫折者と、さらにまた多くの読んだフリをしている人を生みだした小説はないだろう。源氏物語だって、読み切った人間はもっと多いはずだ。そういえば、若き日のアナイス・ニンは、源氏物語の翻訳を読んで「これはフランスの心理小説の稚拙な模倣だ」と日記に書き付けたそうだが。
失われた時を求めて』には当時のスノッブな日本趣味がそこここに散見され、サロンでは日露戦争の行方も話題になる。

2013年11月20日水曜日

ヒミツ保護法と「かゆいところをかく」権利

「社会は必ず腐敗する。これが社会学の第一テーゼです」
 大学時代に受けた社会学基礎講座での第一声がこれだった。講師はまだ助手になったばかりの若い男だった。
「たとえ神や仏であろうと、社会を形成すれば必ず腐敗します」
 無神論を説くセリフで、これ以上先鋭的なものを未だ知らない。若い講師は、生徒たちの興味を惹こうと一生懸命だったのだろう。
「では、社会はどのように腐敗するか、と言いますと……」

2013年11月18日月曜日

誰もほめてくれないから自分でほめるとかはやめて

…………
 日本人が日本人に向かって日本のことを褒めて話すという風潮が近頃目立つようであるが、これは現在の日本においてはたしかにその必要があるからだと思うけれども、そこにちょっと微妙な呼吸があって、それほど変でないものと妙にくすぐったい、もうやめてくれと云いたくなるようなものとがある。
…………

2013年11月15日金曜日

アレを食べたらガンになりコレを食べればガンが治る

 娘が何やら学校でチラシをもらってきた。「乳ガンについて」と「子宮頸ガンについて」
 内容はどちらも似通っていて、早期発見がいかに重要か、そのために定期検診を受けましょう、健康な生活を心がけてガンにならないように気をつけましょう、そんな感じ。二つに分ける必要がどこにあるのか良く判らない。これはやはり、鼻の穴がなぜ二つに分かれているか、というのと同じような、人体の神秘というやつなのだろう。
 がしかし、中学生のうちからガンについての認識を高めておこうという意図は判らなくもない。ガンは今でも日本人の死因のトップだ。
 ところで、日本人がガンで死ぬことが多いのは、長寿化して他の病気にかからなくなったから、と言われているけど、人口比でガンの死因が日本よりも多い国って、モルジブとかモンゴルとか、ボリビアとかホンジュラスなんだよね。これらの国って日本より長寿国なんだっけ?統計ってむつかしーね。

2013年11月13日水曜日

いったいわたくしという現象はなにを食べておおきくなったか

 食品偽装、というのが巷で騒がしいようだ。
 しかし、食べ物などというものは、自分で育てて口にするのでない限りは、いったい何を食っているのやら食わされているのやらよくわからん、というのが本当のところだろう。

 私と食品偽装の出会いは、五歳の頃にさかのぼる。

2013年11月11日月曜日

ドイツの9/11

 ドイツの9/11はいろいろと印象深い日だ。といっても九月十一日のことじゃない。あちらでは表記がひっくり返ってるので、十一月九日ということになる。(本当は一昨日書くべきエントリーだったんだろうけど、まあいいや)
 果たして十一月九日のドイツに何が起こったか、ちょっと並べてみよう。

2013年11月10日日曜日

何も考えてない時に何を考えているか

 何やらぼーっとしてる人に、「何考えてんの?」ときくと、不意をうたれたようにびくっとして「い、いや、何も」と答が返ってくることが多い。
 何も考えていない。すばらしい。無の境地だね。
 んなわきゃーない。人間いつだってなんかしら頭の中を駆け巡ってる。それが口に出すと恥ずかしいような考えのとき、「何も」と答えてるだけなのだ。
 今回は自分がぼーっとしてる時の頭の中味を、ここでちょっとさらけ出してみよう。

2013年11月8日金曜日

リアルという名の妄想とりあえずの〆もしくは女王様の裸踊りPart...いくつだっけ4くらい?

 何日かに分けてぐだぐだ書いてきたのは、「これまでリアルだと思われてきた経済ってものが、なんだかそうじゃなくなってきた」ということを示すためだ。
 ほんとはまだまだ書き足らないが、あんまり長くするのもなんなので、ここらへんで「どうしてそんなことになっちゃったのか」ということを述べておきたいと思う。

2013年11月7日木曜日

リアルという名の妄想続きの続きの続き

 また前回の続き。アベノミクスで引っかかることってのは「絶対成功することになってる」こと。「失敗が許されない」どころの話じゃない、「たとえ失敗しても成功したと言い張る」てことがあらかじめ決ってる。なんでそれがわかるかというと、何をもって成功と言うかの基準があいまいだから。あいまい、てか、「無い」から。
 だからアベノミクスについてあれこれ言うのは無駄なんだけど、やっぱちょっとだけ押さえておきたい。それは、「株価」の話。

2013年11月6日水曜日

リアルという名の妄想続きの続き

 今年のノーベル経済学賞は、ユージン・ファーマロバート・シラーの二人が受賞した。ファーマは理論家というより実践家で、株価のランダム・ウォーク説の論文で名を挙げ、効率的市場仮説でのちっとも当たらない理論式をちゃんと当たるように改良した。シラーはニュー・ケインジアンで、「根拠なき熱狂」の名付け親としても知られている。
 で、この二人、まったく学説上では一致していない。
 シラーはランダム・ウォーク説を「経済学史上最大の間違い」 、効率的市場仮説を「経済思想史における言語道断な間違い」とまで断じている。
 しかし、二人は同時に受賞した。こうしたことは以前なかったわけではなく、ハイエクが受賞した時も、正反対に福祉を重視するミュルダールが同じく賞を受けている。
 こういうことが起きる時ってのは、だいたい経済学が大きな変革を迫られている時だ。

2013年11月3日日曜日

リアルという名の妄想続き

 前回の続き。

 元々経済成長ってのは、国家とか社会がどのくらい発展したのか、を量る目安だったはずだ。
 それがいつの間にやら「目標」に格上げされて、何が起こったかというと格差の拡大ってやつ。なんで格差が問題なのか。いつの時代でもどこの国でも格差はあったじゃないか。うんそうだね。でもその背後にある問題をうんぬんするには、格差という形で現れてくる事柄を観察しておくのが一番効率が良かったんだ。
 経済成長率を目標とすることになった時、とっても頭のいい誰かさんが、あることに気づいた。
「これって、金持ちをどんどん金持ちにして、貧乏人をどんどん貧乏にすれば、同じようにに数字がのばせるよな」

2013年11月2日土曜日

リアルという名の妄想

 まず、ちょっと引用から。

…………
もう経済成長はいらないとか、お金だけがだいじなのではない、とかを他人に対して(それはたとえば「日本は」とか「人々は」とか「先進国は」といった表現 になることも多い)口走る連中は、みんな衣食足りているどころか飽食している人々だということ。そしてその人々が、そのだいじでないはずのお金を手放そう としたりすることはおそらくほとんどないということ。
…………

 これはとある経済を専門にしている人のブログからの引用。別にこの人個人に怨みがあるわけじゃないのでリンクとかはしない。ただ、こういうもの言いに、いわゆる「新自由主義」を標榜する経済の専門家の方々の「意識」 ってのが、よく現れているのでちょっと転載させていただいた。

2013年11月1日金曜日

未来を語ることが少なくなって久しいけれど


2020 日本列島未来予想図 (別冊宝島 2223)
    まだ二十世紀だった頃、人々はよく「未来」について語ったものだった。
 しかし二十一世紀と言う未来が本当にやってきて、人々は未来に関して言葉少なくなったと思う。
 原発が事故ってからは特に。

2013年10月31日木曜日

にっぽんのはろうぃん

    本日はハロウィンとかで、図書館から帰る途中、オレンジ色の帽子をかぶって、ぺなぺなの羽をつけたどこぞの保育園とおぼしき一団を見かけました。総勢五十名ほど。どこでTrick or Treat!するつもりなんだろう?
 ともあれ、ダイソーにすらかぼちゃグッズが並ぶ昨今、少しづつではありますがハロウィンが日本にも定着しつつあるのやも知れません。

 ところで、ハロウィン以前から、日本にも似たような行事があることをご存知でしょうか?

2013年10月30日水曜日

仲良きことは美しい……はずなんだけど

 幼い頃、無駄に広い家に住んでいた。床の間には掛け軸が下がり、欄間には千鳥が踊り、鴨居の上のそこここには何やらごりっぱな絵が掲げられていた。
    その中に、武者小路実篤の絵があった。例の「仲良きことは美しきかな」というアレである。四、五十年ほど前の日本の家には、ほとんどといっていいほど実篤の「仲良きこと」の絵が飾られていた。本物もあったかもしれないが、おおよそは印刷だった。幼い私が目にしたのもそうだろう。なぜそんなに広まっていたのか、それは永遠の謎である。そんな謎、誰も解き明かそうと思わないだろうから。
 そして、幼き日の私には、その絵がなんとも恐ろしいものに思えた。

2013年10月27日日曜日

アリストテレスとおんまさんごっこ

 アリストテレスって人がいます。古代ギリシャの哲学者なわけですが、やっぱ昔の人なんで、「男と女は差別されなくてはならない」「男は女を導くべきだ」という主旨のことを堂々と著作に書いています。まあ、古代ギリシャつったら、「女みたいなやつ」てのが最低の悪口で、うっかり相手をそう罵ったら殺されても文句がいえなかったそうなんで、アリストテレスだってご他聞にもれずにギリシャ男子だったということなのでありましょう。しかしこの人は、師匠のプラトンと違って男色家ではなく、女好きでありました。
  さて、アリストテレスには、哲学者らしからぬ逸話(?)が残っています。
 アリストテレスはアレキサンダー大王の教師だったんですが、教え子のアレキサンダーがカンパスペという女に夢中になってしまったので、「女なんぞに入れあげるとは何事か」と叱りつけました。
 それを耳にしたカンパスペ、アリストテレスのもとへと行きまして、 うっふんあっはんとしなをつくるってえと、さしもの大哲学者もたちまちめろめろになっちまったんですね。
 そして、「アタシといいことしたかったら、おんまさんごっこしてちょうだい、おじいちゃん」とか
 なんとか言われまして、アリストテレスはカンパスペの言うがまま、四つん這いになってくつわまではめられて、部屋の中をはいしどうどうと鞭打たれつつ這い回った、とのこと。

2013年10月26日土曜日

がんばらなくっちゃ?

    えー、ちょっとまた、なんというか、うんざりして、ため息がエクトプラズムのようにだだもれてしまう記事を見かけたんで、ちょっとぐだぐだ書いてみたいと思います。

女性の社会的地位向上について
http://markethack.net/archives/51897489.html

2013年10月23日水曜日

2013年10月21日月曜日

それはどこらへんで言ってることなの?どうしても続けて欲しい(笑)ようなので続き

 えー、あいかわらず日本はスパイ天国のようでございます。こないだなんかスパイたちが「天国だ♪天国だ♪」って西荻のガード下で踊ってましたね。もしかして、日本の素晴らしさを讃えてやまない人たちは、実は全員スパイなんじゃないかと思う今日このごろ、皆様お体の方はいかがでしょうか。風邪などお召しになってはいないでしょうか。

2013年10月20日日曜日

なぜおばあさんというものは怖い話をごく普通のことのようにして話すのか

 いやな雨が降っている。
 確かこんな雨の日に、祖母と二人でテレビを見ていると、何かの拍子に思い出したのか、祖母がこんなことを話してくれた。

 昔々、祖母がまだ子供だった頃、近所にお大尽の大きな屋敷があった。
 そこには美しい一人娘がいたのだが、ある日、帯で首をくくって死んでしまった。原因は、好いた男との結婚に反対されたため、と噂された。屋敷の当主の哀しみようは尋常ではなかった。

2013年10月19日土曜日

少子化って戦争しづらくなるってことでもあるわけで

 ちょっと前の話題になるけど、イランは選挙で穏健派が勝利し、核についての対米協議も順調に終ったという。
イラン核協議が終了
http://www.cnn.co.jp/world/35038616.html
 で、なぜかふと気になってイランの出生率を調べてみた。最近はグーグルで国の名前に”出生率”とつけるとほいほい出て来る。便利なもんだ。
……1.67人。低っっ!
 同様にして調べると、他の中東諸国はだいたい2人を越えている。イラクなんか4.7人だ。


 では次にイスラエルを見てみよう。
……3を越えてるやん。
 つまり、イランの人口は停滞しつつあるけれど、イスラエルの人口は増え続けている、ということ。見たまんまだけど。

2013年10月17日木曜日

『天国の門』をくぐると現れるほんたうのほんたうの亜米利加

ダニエル・カール

    ダニエル・カールという、「山形弁をあやつる変な外人」てな立ち位置でタレントをしている人がいる。3.11のとき原発破損で沸き立つ海外メディアに対して、落ち着くようにとのメッセージをYouTubeで流していた。周囲の状況を理知的に見つめる眼を持った人だ。
 それよりもずっと昔のことになるが、彼の発言でずいぶん印象に残ることがあった。『噂の!東京マガジン』という番組でのことだったが、確か大竹まことが「やっぱ俺たち、アメリカっていうとニューヨークとかロスとかが……」と、なんということもない発言をした時、それをさえぎるようにしてダニエル・カールがやや興奮気味に声を挙げた。
「ちがうよ!!ニューヨークとか、ロサンゼルスとか、あんなところはアメリカじゃないよ!!!」
 色をなすカールに出演者はみなぎょっとしたが、司会者がすぐに別な話に移してその件はそこまでとなった。
 じゃあ、ダニエル・カールの知る本当の「アメリカ」とは、いったいどこにあるのだろう?

『天国の門』という「伝説の」映画がある。
 どこらへんが「伝説」なのか、簡単に説明すると、『ディア・ハンター』という「ベトコンはロシアン・ルーレットがお好き」な感じの映画でアカデミー賞を受けたマイケル・チミノなる映画監督が、この『天国の門』に超々多額の制作費をかけたのにぽしゃってしまい、映画会社は倒産しチミノはハリウッドを追放された——という「伝説」である。映画一本あたりの損失が史上最高であるとして、一時期はギネスに載っていたくらいだ。(今は別な映画になってる)その後チミノは『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』で復活するが、それはまた別な話。

 YouTubeの予告編をアップしてみたけど、これじゃただの勧善懲悪ラブ・ストーリーみたいだ。「夢の終わりにただひとつの愛を」とか意味不明。
(以下ネタバレが含まれます)

2013年10月16日水曜日

街頭インタビューで黙ってたことをここに吐き出しておこう

 今日、店にいく途中で吉祥寺駅から出ると、テレビカメラとマイクを持った男二人にアシスタントらしき女性が、静電気を帯びた糸くずのようにふらふらしてるのが視界に入ってきた。
 なるべく目を合わさないようにしていたのだが、帯電したエボナイトに糸くずがすいよせられるかのように、三人がするすると寄ってきて立ちふさがり、マイクを差し出してきた。
「ちょっとよろしいですかあ〜」
 慇懃にやや早口で申し立てるには、NHKのニュース番組のインタビューであるとのこと。元気だったら「あ、急いでますんで」と振り切るところだが、あいにく先日来風邪にたたられ、へにょへにょになっていた。今の私なら手相の修行とかいう連中にも簡単にひっかかってしまうことだろう。
 覚悟を決めてインタビューとやらを受けることにした。
「最近、若者たちの結婚が減っているのはなぜだと思いますか?」

2013年10月14日月曜日

どこの誰かは知らない人を誰かが知っていてもそこに正義があるわけではない(結局仮題のままだけどとりあえずおしまい)



 一九九二年、日本でインターネットが商用化された
 それ以前からだんだんに失われてきたものが、ここから加速度的に可及的速やかに失われていった。「失われた二十年」で失われたのは経済成長率だけじゃない。人々の間から「何か」が失われていった。「何か」だなんて思わせぶりに書いてしまったのは、本当は失われたんじゃなくて、人々が率先して投げ捨てたからだ。「凡庸」というやつを。

2013年10月13日日曜日

合理的で論理的で科学的で効率的で経済的な自由が生み出す不自由(やっぱりまだ仮題だけど昨日の続き)

 小咄をひとつ。
  船長が船員たちを集めて訓示を垂れた。
 「君たちは栄えある○◎号の乗組員である。優秀な君たちは、今船から海に放り出されたとしても、当然泳ぐことができるだろう」
  船員たちは応えた。
 「ちょろいちょろい」
 「泳げないやつとかいるの?」
 「プールでしか泳いだことないけど、ま、いけるっしょ」
  船長はたのもしげな船員たちに命令を下した。
 「実はこの船は今、危機的状況にある。少しでも積荷を減らさなくてはならない。そこでだ、優秀な選ばれた存在である乗組員諸君は、今から海に飛び込んで自力で泳いでくれ」
  船員たちは次々にどぶんどぶんとび込んだ。
 「うお、水冷たすぎ!」
 「こんなに波が荒いなんて、聞いてないよ〜」
 「だめだー、やっぱ泳げねー」

  なんの話かというと、十年ほど前によく見られた日本の風景である。今でもやってるんだっけか。

2013年10月12日土曜日

つまり人間にとっていちばん非合理的で非論理的で非科学的で非効率で不経済なものは人間自身なのだということ(まだ仮題だけど昨日の続き)

 昨日の続き。
 人間を人間たらしめる構造は無意識下に沈んでいるものだけど、それが表層意識に上昇するとろくでもないことになる。
 上昇するきっかけは互いの不信、すなわち「信用」の喪失だ。

 互いに信用があるなら、言葉でお互いの背中について教えあえばいいだけなので、パラノイアックな構造が浮かび上がることはない。互いの信用を失い「囚人」となるなら、同時に行動し、同じ答を口にすることでしか、お互いを認めることができなくなるのだ。

2013年10月11日金曜日

三人の囚人と信用と凡庸と差別(仮題)

 とある国のとある刑務所はとうとう囚人が入りきらなくなり、微罪のものから選択して解放することになった。
 そこで所長は微罪の三人を選び出し、こんな提案をした。
「ここに円板を五枚用意した。三枚は白で、二枚が黒だ。このうちから選んだ一枚づつをお前たちの背中に貼ることにする。他の者の背中を見ることはできるが、決して自分の背中を見てはならない。また、会話はいっさいしてはならない。自分の背中に何色が貼られているのか、一番最初に分かった者だけが釈放される。また、ただ分かるだけでなく、なぜその色だと分かったのか、論理的に説明できることが必要だ。これができなければ、解答は無効である」
 そして、所長は三人の囚人の背中に、白い円板を一枚づつ貼った。
 しばらくの間、囚人たちは互いの背中を見て首を傾げていたが、そのうち三人ともが同時に所長のもとにやってきて、三人ともが正解した。
 所長は、約束通りに囚人を三人とも解放したのだった。
 さて、囚人たちの解答とは、どのようなものであっただろうか。

2013年10月9日水曜日

パトリス・シェローが死んでしまったというのに『王妃マルゴ』について上手く書けない

 French Director Patrice Chereau dies at 68
http://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-24441598

 パトリス・シェローが亡くなりました。
 



 本当ならここで、あの『ニーベルングの指輪』の演出についてひとくさり、といければいいんでしょうが、音楽の部分しか聞いてないんで、ちょっと語れないんです。指揮はブーレーズでした。いっぺんDVDで観てみたいとは思っているんですが……高くて。

2013年10月7日月曜日

ドラえもんの未来に「本」は存在しているのだろうか

 妻はフリー・ライターをやっているので、たまに出版関係のことについて会話したりする。
妻「やっぱりこういうのって、電子書籍にしたほうがいいのかな」
私「うーん」
妻「そうすればコストもかからないし」
私「そうかもね」
妻「新しい情報が入ったら、その都度改訂すればいいし」
私「でもさ、それ、ホームページを有料で閲覧させるのと何が違うわけ?」
妻「うーん」

 おそらく、多くの出版社の会議室で似たような会話がなされたことと思う。
 kindleは端末を特化することで顧客を囲い込んでみせたけど、一方であやうさもあるわけで。
 将来的に電子書籍てもんが、どんどん「書籍」でなくなっていったとしたら、kindleはまっさきに廃れてしまうだろうなあ、と心配するフリをしたくなる。

2013年10月6日日曜日

それはどこらへんで言ってることなの?続けたくなかったけど続き

 続けたいなんて思ってなかったけど、昨日の続き
 今朝の朝日新聞を読んだら、米軍高官だかが「日本の情報管理は弱い。このままでは機密を共有できない」云々という主旨のことを宣っておりました。はー、さよで。
 ネットで目だたないんでリンクはしないけど、こういう記事が載るとスパイ天国信者な方々の脳みその中に、コビトさんがいーっぱい隊列を組んで「ほらやっぱり!ほらやっぱり!」とシュプレヒコールしながら行進してるんだろうなあ、とうんざりするわけです。
 普段なーんにも言ってないのに、なぜかわざわざこの時期に、という見え見えというか、こんな子供騙しの手品でも喜ぶ人は喜んじゃうんでしょうな。
 だいたいちょっと考えりゃ判るけど、今のアメリカが日本となんか機密を共有するわけがない。どんなに法律を厳しくしたって無駄。ソ連という強力なライバルがいた頃とは違うんだから。

2013年10月5日土曜日

それはどこらへんで言ってることなの?

「みんな◎◎だって言ってるよ〜」というのは昔の妻の口癖だった。いや、今でも言ってるか。私はその都度、「みんなって、誰や」とツッコミを入れたものだった。今では私がうっかり口にすると、妻から「みんなって誰と誰と誰?」と逆襲される。

 今朝の朝日新聞にも、似たような物言いがあった。
「日本はスパイ天国と呼ばれている」
 ……は?誰が呼んでんの?

2013年10月4日金曜日

ないしょないしょのないしょのはなしは「どれいのヒミツ」おまけ

 

 話を白川静氏に戻そう。それと、なんとなくつけてみたが、いちいち「氏」をつけてるとうっとうしいので、以後はずさせてもらう。別段軽んじているわけではないことはわかっていただけるかと思う。

2013年10月3日木曜日

ないしょないしょのないしょのはなしは「どれいのヒミツ」本番編

…………
 御主人の呼んだ当人がその場に居ない時は誰も返事などせぬこと。お代りを勤めたりしていてはきりがない。呼ばれた当人が呼ばれた時に来ればそれで十分と御主人自身認めている。
 あやまちをしたら、仏頂面で横柄にかまえ、自分の方こそ被害者だという態度を見せてやる。怒ってる主人の方から、直きに、折れて来る。
 仲間の者に不埒な所行があるのを知ってても御主人には黙っていること、おしゃべりと思われてはいけないから。
…………

 スウィフト奴婢訓Directions to Servants の冒頭部分である。
  へー、十八世紀の召使いって、こんな感じだったんだー。扱う貴族の方も結構大変だったろうなー、とテレビのコメンテーターならその程度の感想でお茶を濁しといてもいいかもしれないけど、社会人ともなればだいたいの人が「ん?こういうやつ、今でもいるよな。えーと、ほら、あいつあいつ……」と具体的に思い出したりすることができるはずだ。
「あいつ」とは誰か?
 官僚だよねー。ずばりそのもの。
 超天才スウィフトの筆は、「主人にお仕えするもの」の性質を克明に描くことで、官僚たちの生態をするどくえぐり出してみせている。さすが。
 つまりは、官僚たちの持つ傲慢さってのは、多分に「エリート意識」なんて美名で粉飾されているけど、本当は「奴隷根性」でしかないわけだ。ゴミの山を「夢の島」と呼んだようなもんか。