2014年9月14日日曜日

なんでそんなにユダヤが好きなんだ

ユダヤの商法―世界経済を動かす
 (1972年) (ベストセラーシリーズ)
 なんか変な話だけど、ナチスが好きな人ってユダヤも好きだったりするんだよね。いや実際、古本屋やってると、そういう人にちょくちょく出くわすし。
 しかしまあ、なんとなくだけどわからなくはない。ユダヤ人の陰謀!ユダヤがアメリカを動かしている!とかなんとか、そういう派手な話に出くわすと、劇画の世界が現実につながってきたみたいなわくわく感が共通するんだろう。

 それから「日ユ同祖論」なんてのもあった。日本人はユダヤ人の失われた支族の一つだ、ての。この「失われた」ってとこにまたわくわくしちゃうんだろう。でもこの話は日本人が言い出したんじゃなくて、ずいぶん昔、明治時代にユダヤ人の方が言い出したことなのだ。なんとなく親近感を感じる所があったんだろう。背が低いとことか。
 あと、「金儲けが上手い」というのも人気の秘密。でもこれ、昔のヨーロッパでは「利子をとる」のは卑しい仕事だったんで、ユダヤ人がそれを引き受けてた、てだけなんだけどね。イスラム教が利子を禁じてるのを揶揄する人がいるけど、本当はキリスト教だって禁じていたんだよ。
 中東なんかでは「三十人のユダヤ人より一人のアルメニア人」て言われてて、アルメニア人の方が商売がうまいことになっている。アルメニア人で有名なのは、ロッキードのコーチャンとか、旧ソ連の「赤い政商」ミコヤンとか、帝王カラヤンとか。あ、カラヤン自身は否定してるけど。とにかく、名前の最後が「ヤン」とか「アン」になってる。
 八十年代にはそれに続きができて「でも三十人のアルメニア人より一人の大阪商人」と言われたこともあったらしい。もうみんな忘れて無かったことになってるだろうなあ。

 ナチスが好きでユダヤが好きな人ってのは、もちろんイスラエルが好きで、中東でのごたごたについてはイスラエルに味方したりする。こういうの見てると、やっぱアーレントってのは先見性があるなあ、と改めて感心させられる。



 でも、ナチスが好きでユダヤが好きとか、こういう矛盾がへーきで受け入れられちゃうのは、どっちも日本人にとって地球の裏側の出来事だから、ということだけなのだろうか。
 アーレントに言わせると、全体主義ってのは制度ではなく一種の「様式」だそうだ。様式ってやつはちょっと距離を置いた方が魅力的に見えちゃうし、がちがちの制度とは違ってどっか矛盾してても、ぱっと見で「様式」美が成り立ってればそれでいい、て感じになる。
 だから論理的に批判したり矛盾点をついたりしても、こういう「様式」にとらわれた人には蛙のつらにしょんべんなのだ。やれやれ。
 こういう「様式」を否定するのは、女性の役目のような気がする。アーレントも女性だし。否定ってのは、指差して「だっさーい」っていうことね。結局「様式」を否定するのは、そういう感性にダメ出しするのが一番手っ取り早い。
「様式」のどのへんがダサいのか、男がそれを言っても効果が薄いように思うので、ほんと女性の論客にはちゃんとして欲しいんだけど、女性登用の目玉人事で採用された総務大臣が、ナチス賛美本を推薦してるんじゃあねえ。頭イタイ。
HITLER(ヒトラー)選挙戦略 (売れてしまいました)
最後に、あんまり関係ないかもしれないけど、常々疑問に思ってること。
 酒場でドイツ人から「今度はイタ公抜きでやろうぜ」と言われた、なんて話があるけど、この話っていろんなエッセイで見かけるんだが、伝聞ばっかで本人がそう言われたてのに出くわしたことがない。
 記憶してる限りでは、父親の本棚にあったビジネス関係のエッセイにそういうのがあって、自分が生まれる前の発行だったから、かなり昔から出回ってる「噂」なんだと思う。
 それが事実かどうかよりも、そういうのを喜んで広めちゃうところに、「様式」を感じてしまうんだけどね。

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