2014年2月27日木曜日

パコ・デ・ルシアの心臓がリズムを拍つことはもうないということなのか

 パコ・デ・ルシアが亡くなった
 享年六十六。死因は心臓マヒ。メキシコのリゾート、カンクンで子供たちを相手にギターを弾いている最中のことだったという。


  パコ・デ・ルシアの存在を初めて知ったのは、カルロス・サウラの映画『カルメン』を通してのことだから、もう三十年以上前のことだ。まだビデオすら高嶺の花だった時代、大学生の私はなけなしのバイト代をはたいて、この映画を五回も観たのだった。
 以来、アントニオ・ガデスと、パコのギターと、フラメンコには惚れっぱなしだ。最初はヒロインのラウラ・デル・ソルにばかり気を取られていたが、何度も観るうちにそっちはどうでもよくなってしまった。

 パコのギターに魅了された私は、レコード・ショップ(まだCDなんてなかった)で当時まだ珍しかった輸入盤を買いあさったのだった。おかげで一時、貯金がすっからかんになった。レコード高かったからね。
 この人のギターは、そのスピードとテクニックもさることながら、とてつもなく情熱的な早弾きをしてる最中にも、背後にとてもゆったりしたリズムが感じられた。クジラの心臓の鼓動のような、大きくゆったりしたリズムだ。
 上手い人というのはみんなそうなのかも知れないが、パコの演奏の背後にある「鼓動」は、また特別なもののように感じられた。

 その「鼓動」が脈打つことは、もう二度とないのだろう。

 R.I.P.

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